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【南海トラフ新想定×2026年度税制改正】「災害に強い不動産」をどう考えるか——リスクと値段の釣り合いという見方
2026年9月11日
株式会社Birth Asset Consulting
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報道関係者各位
この夏は、災害の報が続きました。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

7月28日、熊本県でマグニチュード7.1、最大震度7の地震が起きました(令和8年熊本地震)。住家被害は、全壊1,796棟・半壊3,457棟を含めて3万6,000棟あまりにのぼっています(8月31日時点)。
8月13日から14日にかけては、千葉県で線状降水帯による記録的な大雨となりました。千葉市では観測史上1位を更新する360ミリ超(24時間)を観測し、県内の広い範囲にレベル5の大雨特別警報が発表されています。住家被害は約4,900棟、うち床上浸水が1,998棟でした(同)。
地震と水害が、わずか2週間余りのあいだに続けて起きた夏です。首都圏でも、浸水がそのまま資産の損害として現れました。
長期の想定も動いています。2025年3月、南海トラフ巨大地震の被害想定が13年ぶりに見直されました。まとめたのは、国の防災方針を決める中央防災会議(会長は内閣総理大臣)の作業部会です。
前回想定と比べると、2つの数字が逆方向に動いています。死者数は最大約32万3,000人から約29万8,000人へ。一方、建物や設備などの被害額は約169.5兆円から約224.9兆円へと増えました(推計手法の見直しも同時に行われており、単純な比較はできません)。人的被害の想定が下がる一方で、資産の被害額は上がった。不動産を扱う立場としては、気になる方向性です。
目の前の被害と、長期の想定。どちらの数字を見ても、「災害に強い不動産はどれか」と考えたくなります。ただ、日本に災害リスクがゼロの土地はほとんどありません。まず確認すべきは、人命の安全、居住・賃貸の継続可能性、法規制です。そのうえで、残るリスクが価格、保険料、融資条件、復旧期間、将来の売却可能性に見合っているかを判断します。
①【前提の整理】災害リスクは、どこまで「値段」に反映されているか
災害リスクは、不動産の値段と切り離されたものではありません。不動産鑑定士が従う『不動産鑑定評価基準』(国土交通省)でも、「洪水、地すべり等の災害の発生の危険性」が、住宅地の価格を形づくる地域要因の一つとして例示されています。
データもあります。日本銀行の職員による2022年のワーキングペーパーでは、2001年から2020年までの全国約3,500地点を分析し、想定浸水深が1メートル深くなると、地価は住宅地で平均1.1%、商業地で平均4.7%低くなるという結果が示されています。また、地域や土地の用途によって、リスクの反映度合いが異なる可能性も指摘されています。
税の世界も同じ方向です。相続税では、路線価地域にある土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の宅地は、区域が占める割合に応じて評価が減額されます。一方、その手前の土砂災害警戒区域(イエローゾーン)は特別の減額対象ではありません。国税庁は、イエローゾーンの危険性は「土地価格の水準に既に織り込まれているとも考えられる」と説明しています。なお、倍率地域は、固定資産税評価額に建築制限の影響が反映されているとの考えから、この特別補正の対象外です。
見るべきは、災害リスクの有無だけではありません。人命上の危険と法規制を確認したうえで、そのリスクが価格・保険・融資条件に十分反映されているかを見ます。注意が必要なのは、リスクに見合う値引きや対策がない物件を買ってしまうケースです。
②【制度環境の整理】2026年度の税制改正で、レッドゾーンの「新築」が優遇から外れる
その値段のつき方の前提が、制度の側から動き始めています。
国土交通省の令和8年度税制改正概要によれば、住宅ローン減税に「立地の条件」が加わり、2028年(令和10年)以降に入居する分から、災害レッドゾーンに新築した住宅は減税の対象外になります。税制でいう災害レッドゾーンとは、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域、および一定の災害危険区域を指します。
一方、建て替え、既存住宅の取得、リフォームは、この住宅ローン減税の立地要件による除外の対象ではありません。
これとは別に、2026年度税制改正では、新築住宅の固定資産税の減額措置や居住用財産の買換え特例についても、一定のハザードエリア内の住宅・買換資産を対象外とする見直しが行われています。制度ごとに対象区域と適用時期が異なるため、個別確認が必要です。
また、2020年改正の都市計画法では、自己居住用住宅を除き、災害レッドゾーンを開発区域に含む開発は、原則として許可基準を満たさない扱いとなりました。ただし、区域内に建築物を設けないなど、周辺状況や安全措置により例外的に許可される場合があります。分譲などの面的な出口が狭まる可能性はありますが、個別案件では自治体への確認が必要です。
③【判断の順序】安全性を確認したうえで、「釣り合っているかどうか」
つまり、レッドゾーンの土地は「新築して売る」という出口が細くなっていきます。「レッドゾーンだから下がる」という単純な話ではなく、同じ土地でも、どの出口を前提に値段をつけるかで差が開いていく——私たちはそう見ています。
なお、相続税評価の減額は、課税時点の財産評価に反映されるものであり、保有中の収支悪化や将来の売却価格の低下を補うものではありません。
購入を検討される方に確認をお勧めしているのは、①人命上の危険と避難方法、②建築・開発規制、③保険・融資条件、④価格にどこまでリスクが反映されているか、の4点です。さらに、将来の買主が利用できる融資・税制も確認します。
すでにお持ちの方も、「売るか持つか」の二択ではありません。防災工事等による区域指定解除の要件や見込み、反対に今後指定が拡大・変更される可能性を行政に確認し、評価・保険・融資への影響と組み替えのタイミングを検討します。早めに確認するほど、選択肢を比較しやすくなります。
次号では、銀行と保険の側から、同じテーマを扱います。
出典
内閣府「令和8年熊本地震に係る被害状況等について」(令和8年8月31日17時現在)/内閣府「令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について」(令和8年8月31日17時現在)/内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定について(第一次報告)」(平成24年8月29日)/内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定について(第二次報告)〜経済的な被害〜」(平成25年3月18日)/中央防災会議 防災対策実行会議「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」報告書説明資料(令和7年3月31日)/国土交通省『不動産鑑定評価基準』第3章第2節 地域要因/日本銀行ワーキングペーパー No.22-J-10「水害リスクが地価に及ぼす影響」(2022年4月)/国税庁「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」(財産評価基本通達20-6ほか)/国土交通省「令和8年度国土交通省税制改正概要」(令和7年12月)/国土交通省「都市計画法改正に関するQ&A」
【Birth Asset Consultingについて】
Birth Asset Consultingは、収益不動産と相続不動産を中心に、取得・保有・管理・売却までを一体で支援する不動産コンサルティング会社です。共同代表2名が、金融、不動産、建築、経営の各視点から直接対応します。代表の臼井啓祐は、元銀行員で、行政書士、1級FP技能士・CFP®として相続・不動産実務に携わっています。代表の越匠平は、建築学科卒・MBAで、CPM®・CCIM®等の不動産資格を保有しています。税務、登記、法律相談等については、必要に応じて税理士、司法書士、弁護士等の専門家と連携し、長期的な資産管理を支援します。

【寄稿可能】
最近の投資不動産傾向や資産形成などのテーマ・トレンドについて寄稿、お話可能です。
<共同代表2名のプロフィール>
・臼井 啓祐(うすい けいすけ)
<略歴>
2007年4月: 株式会社山田債権回収管理総合事務所 新卒入社
2007年5月: 司法書士法人 山田合同事務所にて不動産登記実務を経験
2008年1月: 株式会社横浜銀行 出向、銀行業務全般の経験を積む
2009年7月: 山田合同事務所復職、社長付営業部責任者就任
2011年8月: 株式会社エヌアセットBerryへ創業メンバーとして転職
2015年9月: 同社取締役就任
2017年9月:かわさき相続サポートセンター 立ち上げ参画
2024年9月: 株式会社Birth Asset Consulting 創業
2024年9月:行政書士 グルーヴ・FP法務事務所を開設
<保有資格>
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター、一般社団法人 不動産証券化協会認定マスター、CPM®(米国不動産経営管理士)、CFP®(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャルプランナー、行政書士、NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員、令和6年不動産鑑定士 短答式試験合格
・越 匠平(こし しょうへい)
<略歴>
2004年4月〜 総合不動産会社
2008年12月〜 (株)日本エスクロー信託(現(株)山田エスクロー信託)
2010年8月〜 (株)エヌアセットBerry 設立
2024年9月〜 株式会社Birth Asset Consulting 創業
<保有資格>
MBA(経営学修士)、宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、CPM®(米国不動産経営管理士)、CCIM®(米国不動産投資顧問)、AFP®(日本FP協会認定)、一般社団法人 不動産証券化協会認定マスター、日管協認定 上級相続支援コンサルタント、賃貸住宅メンテナンス主任者
<会社概要>
- 会社名: 株式会社Birth Asset Consulting
- 代表者: 共同代表取締役 臼井 啓祐 / 越 匠平
- 所在地: 横浜オフィス 神奈川県横浜市西区北幸1-11-5相鉄KSビル9階
鎌倉オフィス 神奈川県鎌倉市七里ガ浜東2丁目21-11 - 設立: 2024年9月
- 事業内容: 収益不動産の売買仲介、投資コンサルティング、プロパティマネジメント、相続関連業務、行政書士業務
- 公式HP: https://birth-ac.com/
<報道関係者様からのお問合せ先>
株式会社Birth Asset Consulting 臼井/越
Tel:0467-80-2969 Mail:info@birth-ac.com
本稿は、2026年9月11日に報道関係者向けに配信したニュースレターを、そのまま掲載したものです。記載の数値・制度は配信時点のものです。災害リスクを踏まえた物件の取得・保有・売却のご相談は、お問い合わせフォームから承ります。