【住宅向け火災保険の長期契約が「最長5年」になった背景】銀行と保険会社は、ハザードエリアの不動産をどう見ているか

2026年9月18日
株式会社Birth Asset Consulting

NEWSLETTER
報道関係者各位

住宅向け火災保険では、長期契約が最長5年の商品が一般的になっています。

その背景の一つが、損害保険料率算出機構による2021年の参考純率改定です。同機構は、自然災害リスクの長期評価が難しくなっていることから、参考純率を適用できる保険期間を最長10年から最長5年へ短縮しました。実際の契約期間や保険料は、各保険会社の商品によって異なります。

これは不動産の収支計画にも関わります。いまの保険料で回っている収支が、次の更新でもそのまま回るとは限らないからです。

前号では、災害リスクがすでに土地の値段にある程度反映されていること、税制改正でレッドゾーンの新築が減税から外れることを整理しました。今号は、銀行と保険の側から見ていきます。

災害リスクと不動産の融資・保険
※イメージ画像

①【融資の整理】銀行が見ているのは、「気候変動」というより「担保」

金融機関の取扱いは一律ではありませんが、災害リスクが審査や担保評価にどう反映されるかは確認すべき論点です。手がかりは、金融庁の公表資料にあります。

金融庁は、自然災害による被害などの物理的リスクを金融機関が把握・評価するための考え方を示しています。最新の調査では、高い風水害リスクが想定される投融資案件について、保険付保の確認や担保評価への反映を行う金融機関の例が紹介されています。

一方、同調査は、過去の風水害リスク顕在化事例による投融資への影響は総じて限定的だったとも整理しています。すべての金融機関が一律に融資を厳格化しているわけではありませんが、物件のハザード情報と保険の有無が、今後の審査・担保評価でより重視される可能性があります。

融資条件への影響は、金融機関や物件、借り手の属性によって異なります。金利差、借入可能額、返済期間が変わった場合の収支を複数の前提で試算しておくことが重要です。

②【保険の整理】災害リスクのコストは、地域ごとに数字がついた

保険料そのものも動いています。火災保険の参考純率は、2019年10月の届出で全国平均+4.9%、2021年5月に+10.9%、2023年6月に+13.0%と、3回続けて引き上げられました。いずれも直前の参考純率と比べた全国平均の変化率で、3回分を掛け合わせると2019年の改定前の約1.3倍です。参考純率は保険金の支払いに充てる部分だけの数値で、保険会社の経費は含みません。実際の保険料の上げ幅とそのまま一致するわけではありません。

2023年の改定では、参考純率上の水災料率が、市区町村ごとに5段階へ細分化されました。最も低い「1等地」と最も高い「5等地」の差は約1.2倍です。実際の保険料は、各保険会社の商品設計や契約条件によって異なります。

損害保険料率算出機構は5段階化の背景として、保険料節約のために水災補償を外す傾向が続けば、水災補償を付帯できなくなる契約者が増える懸念があると説明しています。なお、水災等地は市区町村単位の区分で、外水氾濫だけでなく内水氾濫や土砂災害なども含めた水災リスク全体を見たものです。個別物件の浸水深を示すものではなく、洪水ハザードマップ等の情報とも必ずしも一致しません。物件単位では、最新のハザードマップも併せて確認する必要があります。

保険の付保状況が担保評価に反映される金融機関の例はあります。ただし、取扱いは一律ではありません。目先の保険料だけで判断せず、売却や借り換え時の融資条件への影響も確認する必要があります。

③【実務の整理】保険を組むときに、私たちが確認していること

第一に、水災補償を外す前に、自分の物件が参考純率上の何等地かを調べ、最新のハザードマップで個別物件のリスクを確認すること。免責金額の設定など、補償を削らずにコストを下げる方法を先に検討します。

第二に、次回更新時(最長5年後)の保険料でも収支が回るかを確かめること。金利上昇と保険料上昇を同時に織り込んでも成り立つかが、実質的なストレステストになります。

第三に、地震保険を「建て直すためのお金」と考えないこと。火災保険の30〜50%の範囲でしか掛けられず、建物5,000万円・家財1,000万円の上限もあります。当面の資金繰りを確保するものと位置づけ、不足分は別に手当てしておくのが現実的です。免震・耐震等級・建築年などの割引(10〜50%、重複不可)の確認も忘れずに。

第四に、一棟物件では「止まっている間」も見ておくこと。建物の補償だけでは、復旧期間中の家賃収入の損失まで自動的に補償されませんが、家賃収入特約・家賃補償特約で対象となる場合があります。対象事故や補償期間は商品ごとに異なり、地震等を原因とする損失が対象外となる商品もあるため、約款の確認が必要です。

ハザードエリアだから一律に対象外とする必要はありません。ただし、人命上の危険、法規制、保険・融資の制約を先に確認し、それでも残るリスクが価格に十分反映されていることが前提です。値段・保険・融資条件に加え、復旧期間と将来の売却可能性まで含めて判断します。

【Birth Asset Consultingについて】

Birth Asset Consultingは、収益不動産と相続不動産を中心に、取得・保有・管理・売却までを一体で支援する不動産コンサルティング会社です。共同代表2名が、金融、不動産、建築、経営の各視点から直接対応します。代表の臼井啓祐は、元銀行員で、行政書士、1級FP技能士・CFP®として相続・不動産実務に携わっています。代表の越匠平は、建築学科卒・MBAで、CPM®・CCIM®等の不動産資格を保有しています。税務、登記、法律相談等については、必要に応じて税理士、司法書士、弁護士等の専門家と連携し、長期的な資産管理を支援します。

株式会社Birth Asset Consulting 共同代表 臼井 啓祐・越 匠平
(写真:左から 臼井 啓祐(うすい けいすけ)・越 匠平(こし しょうへい))

【寄稿可能】最近の投資不動産の傾向や資産形成などのテーマについて、寄稿・取材対応が可能です。

出典

損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」(2019年10月・2021年5月・2023年6月 各届出)/金融庁「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方」(2022年7月)/金融庁「気候関連リスクに関する金融機関の取組の動向や課題」(令和7年6月)/金融庁「風水害リスクに関する金融機関の取組の動向や課題」(令和8年7月)/財務省「地震保険制度の概要」


本稿は、2026年9月18日に報道関係者向けに配信したニュースレターを、そのまま掲載したものです。記載の数値・制度は配信時点のものです。保険・融資条件を踏まえた収益物件の収支見直しのご相談は、お問い合わせフォームから承ります。

Contact

お気軽にお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ
045-287-0680受付時間:10:00〜18:00
FAX:050-3145-0422
Page top